2020年8月16日日曜日

CDレビュー 米津玄師「STRAY SHEEP」

  存在を知ったのは「Flowerwall」だった。ラジオから流れてくるその声とメロディラインに一瞬で虜になったことを覚えている。

 ボーカロイドで注目を集めたという経歴のため、個人的には少し抵抗感があったが、気に入った音楽に対して、そんな些細なことにアレルギー反応を示しているのは勿体ないですね。今作のリリースを記念して、過去作も全て大人買い。まずは最新の5thをじっくり聴いてみたのだが、才能の爆発を感じる傑作だと感じた。

 サウンドは新しいけど、歌詞はかなり和風。そして独特な声質。これが米津玄師の魅力だと思っているのだが、収録されている15曲、全てにこの要素が凝縮されている。リード曲のM3「感電」はホーンの音が印象的でアルバム曲でありながら、新たな代表曲になりそう。

 M8「Lemon」は、これだけミミタコ状態なので、さすがに聴き飽きてもいいはずなのに、そんな感覚を全く覚えさせない。これが米津サウンドの凄さなのか。

 自ら手掛けて、大ヒットした「パプリカ」と「まちがいさがし」のセルフカバーも収録されているのだが、これは不思議なことに楽曲の新たな魅力を感じることができなかった。これは、提供先のミュージシャンが歌うことによって楽曲の魅力が最大限引き出されるように曲を作っているからなんだと思う。だからきっと「カイト」をセルフカバーしても、嵐を超えられないだろう。それは米津玄師の歌唱力云々という話ではなく、それだけ、歌い手に合わせた楽曲の制作力があるということなんだと思う。

 とにかく凄い一枚だった。これは残る過去作4枚を聴くのも楽しみだ。

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